東京、2026年5月21日 — 厚生労働省は21日、加熱式たばこの受動喫煙による健康影響に関する研究班の評価をまとめ、公表した。室内の有害物質が増加することは確認された一方、発がん性との明確な関連については「判断できない」との結論が示された。
評価の背景 加熱式たばこをめぐる特例措置とは
2020年4月に全面施行された改正健康増進法により、飲食店などの屋内での喫煙は原則として禁止された。紙巻きたばこは、基準を満たした喫煙専用室でのみ使用が認められ、その室内での飲食は禁止されている。
しかし加熱式たばこについては、「受動喫煙の健康影響が明らかではない」という理由から、特例措置が設けられてきた。加熱式たばこ専用の喫煙室では、飲食をしながら喫煙することが現在も認められている。
この特例措置の妥当性を改めて検討するため、厚生労働省の研究班は国内外の論文を分析し、今回の評価をまとめた。
評価の内容 有害物質の増加は確認、しかし発がん性は「判断できず」
今回の評価によると、加熱式たばこを室内で使用した場合、周囲の空気中の有害物質が増加することが確認された。一部の発がん性物質も検出されている。
しかし現時点では、受動喫煙と発がん性との因果関係を明確に示す論文は存在しないとして、評価書は「判断できない」との表現にとどめた。
また、ぜんそくなど呼吸器症状との関連を示唆する報告も一部存在するが、研究数が少なく、「関連はやや弱い」との判断が示された。
喫煙者の4割が利用 加熱式たばこの急速な普及
加熱式たばこは2013年12月に日本で販売が開始され、2016年ごろから急速に普及した。現在では喫煙者のおよそ4割が加熱式たばこを利用しているとされており、アイコス(IQOS)、グロー(glo)、プルーム(Ploom)などの製品が広く出回っている。
加熱式たばこは、葉たばこを燃焼させず電気で加熱し、ニコチンを含むエアロゾルを吸入する仕組みだ。製造各社は「紙巻きたばこより有害物質が少ない」と主張してきたが、健康専門家の間では長期的な影響についての懸念が続いていた。
今後の焦点 専門家委員会が規制強化を検討へ
今回の評価は同日、改正健康増進法の見直しを検討する厚生労働省の専門家委員会に提出された。委員会はこれをもとに、加熱式たばこに対する規制を強化するかどうかを議論する予定だ。
日本学術会議は2023年の報告書の中で、加熱式たばこに対する現行の例外扱いを「誤った施策」と批判しており、受動喫煙対策の徹底と規制強化を求めてきた。今回の評価公表を受け、規制をめぐる議論が本格化することが予想される。
専門家の見解 「データ不足」が課題
国立がん研究センターや公衆衛生の専門家らは以前から、加熱式たばこの受動喫煙に関するデータが世界的に不足していると指摘してきた。販売開始からの年数が浅いため、長期使用に伴う健康影響を評価するための疫学データがまだ十分に蓄積されていないためだ。
今回の評価もこの点を認めており、「現時点では判断できない」という結論は、安全性を保証するものではなく、あくまでもデータ不足を反映したものであると受け取る必要がある。
まとめ
今回の厚生労働省の評価は、加熱式たばこの受動喫煙が無害であることを示したわけではない。有害物質の増加は事実として確認されており、発がん性や呼吸器への影響についての科学的な判断が下せないのは、現時点でのデータが不足しているからにすぎない。
専門家委員会の今後の議論次第では、飲食可能な加熱式たばこ専用喫煙室の廃止を含む、規制の大幅な見直しが行われる可能性もある。公衆衛生の観点から、今後の政策決定が注目される。

